歯周病という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思います、歯周病が口の中だけの問題だと思っていませんか?
食べ物や飲み物を通じて多くの栄養を体内に取り込み、それが全身に行き渡ります。しかし、栄養だけでなく、口の中やその周りに存在する様々な菌も取り込まれているのです。このため、最近では歯周病と全身の健康との関連性が注目されています。今回は、特に影響が深いとされる歯周病と糖尿病の関係についてお話ししたいと思います。
■歯周病とは?
歯周病とは、歯を支える組織(歯肉や歯槽骨)が細菌によって炎症を起こし、徐々に破壊される病気です。初期段階では歯肉の炎症や出血が見られますが、進行すると歯槽骨が溶けて歯がぐらつき、最終的には歯を失うこともあります。
■糖尿病はどんな病気?
私たちは、日々の活動に必要なエネルギー源(ブドウ糖など)を食事から摂取しています。
摂取した糖分は腸で吸収され、血液中に運ばれます。しかし、血中に糖が留まっているだけでは、エネルギー源として利用できません。ここで「血中の糖をエネルギーに変え、肝臓や筋肉、脂肪組織に貯蔵するために働くホルモン」がインスリンです。
食事によって血糖値が上昇すると、すぐに膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンの作用により血中の糖が細胞に取り込まれてエネルギーとして使われることで、血糖値は低下します。つまり、インスリンは血糖値を下げる役割を果たしています。
インスリンの働きが弱まると、血中の糖濃度が高いまま(高血糖)が続き、糖尿病が発症します。この病気は、血中の糖が細胞に取り込まれず、尿に糖が排泄されることから「糖尿病」と呼ばれます。
糖尿病はインスリンの作用不足によって慢性的な高血糖を引き起こし、血管を損傷させます。長期間にわたって放置されると、特有の合併症を含むさまざまな健康問題を引き起こす代謝疾患です。
■歯周病と糖尿病の関係性
一見関係がなさそうに見える歯周病と糖尿病ですが、実際には深い関連があります。以下にその関係を説明します。
口腔内および歯周ポケット内の環境変化
糖尿病の患者は、健康な人に比べて唾液の分泌が減少します。さらに、唾液中の糖分濃度が高くなるため、「プラーク(歯垢)の付着」や「細菌の増殖」が促進され、歯周病が進行しやすくなります。
易感染性
糖尿病では、体の感染防御機能が低下することが知られています。これにより、感染した組織の修復が遅れ、高血糖が血管を損傷するため、歯周病にかかりやすい状態が生じます。
高血糖下における炎症増幅
高血糖状態が続くと、白血球の機能や免疫反応が低下し、歯周病が発症・悪化しやすくなります。また、歯周病が糖尿病の悪化を引き起こすこともあります。歯周病によって歯肉で作られる炎症物質が血液を通じてインスリンの効果を弱めてしまうのです。さらに、歯を失うと柔らかい食べ物を好むようになり、栄養バランスが崩れて血糖値に悪影響を及ぼすことがあります。
■歯周病と糖尿病の対策にはセルフケアと定期受診が重要です
糖尿病の方にとって、歯周病治療の一環としてプラークコントロールを徹底することが非常に重要です。さらに、高血糖そのものが歯周病のリスクとなるため、歯科医と内科医が連携して治療を行うことも必要です。
歯周病を適切に治療することでインスリン阻害物質の産生が低下し、糖尿病の改善が期待できることが示されています。逆に、糖尿病の改善が歯周病の症状を緩和することもわかってきています。歯周病と糖尿病は互いに悪影響を与えるだけでなく、治療を通じて双方の症状を改善することが可能です。
しかし、歯周病は急性症状が出ない限り痛みを伴わないため、進行具合が把握しにくいです。したがって、進行を見逃さないようにするためには、定期的な歯科受診が必要です。定期的なチェックで歯周病の進行度を確認することが重要です。
また、糖尿病と関連の深い歯周病の対策としてセルフケアも重要です。特に糖尿病の方は歯肉が健康な人よりも炎症を起こしやすいため、毎日のケアに注意が必要です。適切なセルフケアを行うために、ケア方法について疑問があれば、お気軽にご相談ください。
当医院では、糖尿病科と連携して、歯科的協力を行っております。まずは静岡市駿河区にある歯医者【藤本歯科医院】へお気軽にご相談ください。